みなし譲渡課税と所得税法上の株価

個人が法人へ株式を譲渡する場合の価格は、自由に設定して良いものではなく、「税法上の時価」を意識する必要があります。所得税法は、個人の税務を定めた法律ですが、非上場株式の時価について、以下のような考え方をとっています。

まず、個人から法人へ譲渡する場合、時価の2分の1を下回る価額で売買すると、個人側は、時価で譲渡をしたものとみなされた譲渡所得税が課されます。これを「みなし譲渡課税」といいます。(所得税法59条1項2号、同施行令169条)

例えば、税法上の株価が3万円のところ、1万円で売却すると、3万円で売却したとみなされて税金が課される、ということが生じ得ます。

このように、個人が法人へ株式を譲渡する場合の価格は、「税法上の時価」を意識して決める必要があります。

この時価は、所得税法基本通達により「その株式の発行法人の1株当たりの純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額」とよることとされ、さらに一定の条件下で「財産評価基本通達」の「取引相場のない株式の評価」を用いて算定することとされています。(所得税法基本通達59-6、23~35共-9、財産評価基本通達(法令解釈通達)178~189-7)

以上により、個人が法人へ株式を譲渡する場合は、財産評価基本通達を準用した税法上の株価算定を行う必要が生じます。